ロシアが家電用半導体を武器に流用しているという報道は本当なのか?

最近のニュース番組やサイトに書かれている、ロシアは白物家電で戦争をしているという記事 本当なのか?って思っています。

https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000273989.html

には、カザフスタン、アルメニアで冷蔵庫、洗濯機の輸出入が急増 って書いてあってニュースになるくらいなので、恐らく事実なんでしょう。ヨーロッパの白物家電が、旧ソ連国を経由してロシアに入っている事実がある。

システム設計経験者や半導体関係者はすぐに理解できると思いますが、半導体は手に入らないからといって、簡単に別の半導体で代替できるものではありません。メモリのように互換品が多い種類の半導体は、A社のものが手に入らないからB社のものに切り替えることが可能な場合もありますけど、CPUのような高度なロジック品はピン配置、インストラクション、IOマップなどが一致しないのでなかなか難しい。CPU替えたら、システムやプログラムは作り直しですからね。解せない。

こんなことはシステム屋には常識なんですが、にもかかわらず、白物家電から取り外した半導体を武器や戦争車両に流用している的な記事が流れているってどういうこと?と不思議に思っています。設計から全部やり直しているってこと?そうなると、もっと足りない半導体の数が増える気がします。

半導体が必要な最新型戦車は生産できなくて、高機能半導体が不要な1960年代戦車を再生産すると流れています(EFI車からキャブレター車に逆行しているのと同じ)が、戦車、装甲車って基本的には車両ですから車に半導体がどのように使われているのかを考えてみます。
車両には、エンジン制御、車輪センサー、インジケーター、環境や空調センス、通信などがコンピューター制御されているはずです。先頭車両だとプラス武器制御や姿勢制御。
ここら辺には、おそらく8~16bit クラス半導体が使われているでしょう。

それに対して家電。基本的にはスピードは必要なく、集積度と低消費電力性を求められます。冷蔵庫なら、温度測定、モーター制御、扉の開閉センサーなどを内蔵して、高性能よりも高集積、たくさんのIOを求められる部品です。
電子レンジや炊飯器なんかも同じ方向性。内蔵する半導体チップ数を減らして、CPUもメモリも内蔵して出来るだけワンチップで何でも行える半導体が使用されているはずで、4~8bit CPUで十分だと思います。

性格が全く異なる分野だし、そもそも、CPUアーキテクチャが異なるのでは?って思います。そもそも家電用CPUってプログラム内蔵系なので、プログラムを書き換えないと他のシステムに流用できないでしょ。特定の白物家電に高性能CPU搭載のものがあって、そういうモデルのみが輸入激増しているっていうなら、流用しているのかもしれませんが。流用できないとなると、目的はCPUじゃなくて、それ以外の用途のもの?

そもそもシステムを構成する半導体には、

  1. CPUやグラフィックスコントローラのようなロジック
  2. メモリ(RAM、ROM、プログラマブルメモリ)
  3. 温度や回転数など外部情報を取り込むためのセンサーや入力系
  4. システム内で計算した結果に基づいて外部デバイスを動作させる出力系
  5. 通信用(LAN、USB、無線通信など)
  6. 高電圧を制御する高耐圧半導体

などがあります。
CPUは互換性の観点から使えないとしても、CPU以外の半導体は家電から抜き取れるのかも。ただ、戦争車両用の半導体が不足しているなら、まずは目的が共通している車両のECUなどに内蔵されているパーツから流量出来ないか考えるのが普通じゃないのかな?6のパワー半導体が家電に使われている場合は、武器に流用できるかもしれません。

戦車やミサイルに必要な半導体の性能ってどれくらいのものなんでしょう。30MHzくらいあれば十分の気がする。1μmのプロセスあれば、16bit CPU作れるでしょ。ロシアにもそれくらいのプロセス技術はあるんじゃないかと思いますが、設計図がないのかな?検索してゆくと、ロシアの半導体産業を分析している次の記事が見つかりました。

https://www.cistec.or.jp/jaist/event/kenkyuutaikai/kenkyu34/01-03oota.pdf

これによると、ロシアには半導体の技術はあるにはあるけど、今まで大半を輸入に頼っていたことと、制裁でサプライチェーンを遮断されて、まともな半導体を入手することは出来ないようです。
設計技術があっても製造技術が無いとか、制裁で製造に必要な化学物質を輸入できないとかであれば、半導体を作れないという話も納得。そして、それは必要な制裁なので、今後もず~と続けてゆくべきこと。

本当に数個の半導体チップを抜き取るために白物家電品を輸入しているのだとすると、そのために使えない白物家電がどんどん増えてるってこと?バカじゃないかろうかとは思うものの、それしか手段が無いのだったらやっているのかもしれません。こういう記事もあり、なるほどと思うものの、余った残余はどうすんの?

https://wired.jp/article/chip-shortage-hacks/

私の考える可能性としては、ウクライナ侵略に参加したロシア兵が、ウクライナの家庭から洗濯機を略奪しているとのこと。今まで洗濯機というものを知らなかった帰還ロシア兵が、運よく帰還でき、洗濯機などの白物家電を知り、侵略参加でもらった給料で購入しているってケース。
可能性はあるにしても、家電用半導体を武器製造に流用しているっているのは、情勢分析不足のような気がします。

個人的にはもっと分析して、武器に流用できる半導体を本当に搭載している白物家電があるなら、迂回輸入されないように手を打つ必要があると思います。

家電以外で、以下のURLの記事があります。

https://news.yahoo.co.jp/articles/f1d245f7f2b05745e630777280ee59cedd81969c

私はこっちの方が問題じゃないかと思います。日本国内でも、中古自動車やバイクの不足が起きているのに、こういう時期にロシアに中古車を大量輸出しているなんて。。。。車両用の内蔵コンピュータの方が武器や戦闘車両に流用されやすいんじゃないの?って思うんですが。
高い値段を付けてくれるならロシアでもいいって?故障して修理出来なくなった車を見て、世界がロシアをどう見ているか気づいてほしいわ。

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