ASRock AD2700-ITX for Windows のまとめ

(2021/01/16 Updated)

Intel Atom D2700 CPU搭載のASRock AD2700-itx にいろいろと悩まされたので、このボードにWindowsをインストールして使用した場合に出会ったいろいろな問題を一旦まとめておくことにしました。

結論としては、32bit Windows7 限定で、メールとWeb、その他ビジネスアプリを使うためのプラットフォームとして使用するにはコストパフォーマンスと低消費電力に優れたボードといえますが、ちょっとでも欲張ったりWin7以外のOS利用を考えると、途端に中途半端な仕様に戸惑う事になるボードです。

AD2700の特徴

64bitコマンド対応の2 コア 4スレッド 約2.1GHz動作のCPUと、OSから4GBまで利用可能なDDR3 SDメモリスロットが2つ、SATA 2ch と USB 3.0, 2.0 ポート、HDMI, DVI-I, VGAビデオポートが内蔵されていてそのうち2ポートを同時使用可能。64bit OSはBIOSレベルで未対応。

  • マザーボード上にファンが無いため、静か。
  • ビジネス用途として使用する場合、そこそこ動いてくれて低消費電力。
    具体的には、マザーボード、2GB(1GB+1GB)メモリと3.5inch HDD 1台で Windows7を使用した場合、トータル消費電力が 27W程度で稼働し、付属アプリでビデオエンコーディングさせCPU負荷100%で34W。Windows Update実行中で30Wと非常に低消費電力です。HDDの消費電力は常時5W程度と考えられますので、HDDをSSD に交換すれば常時20W程度で24時間稼働させるのも夢ではないかも。20Wという数字は、ちょっと高性能な家庭用ルーターと同等の消費電力。
  • Windows7 エクスペリエンスインデックスは、
    プロセッサ: 3.8、メモリ: 5.3、グラフィックス: 5.9、ゲームグラフィックス: 3.4、プライマリーハードディスク: 5.9
  • 64bit対応CPUを搭載しているのに、64bit命令の実行が不可能なように制限が掛けられています。これはASRockだけではなくIntelが販売しているボードも同じ仕様のようです。従って、32bit OSしかインストール出来ません。仕様を無視して64bit OSをインストールしようとすると、Windowsの場合はインストーラーが停止します。Unix系OSの場合は、起動とリブートを繰り返したり、「VLIW実行不可能」というメッセージを表示してインストーラが止まります。
  • BIOSレベルでは4GB以上のメモリ容量も認識しますが、認識される容量全てをOSから利用出来るわけではありません。マニュアルには正確に記述されていませんがメモリスロットの仕様に制約があるようです。
    例えば、1GB + 1GB や 2GB x1 は問題ありませんが、1GB + 2GB の構成にした場合、BIOSさえ起動しませんでした。DIMM側のダブルサイズなどアドレスバス関係の問題かもしれませんが、利用不可能な組み合わせがある事は確かです。
  • ボードにはWindows7 用のドライバーしか付属していません。
    Windowsで使用する場合は、SATA, オーディオ、USB3.0、LAN 、ビデオドライバーなどが必要になりますが、ビデオドライバー(GMA3650)に関してはWindows7用のものしか付属していません。その他のドライバーはWindows XP, Vistaでも使用可能なようです。内蔵ビデオネイティブドライバーで使用したい場合、このボードはWindows7専用ということになります。GMA3650の性能をフルに発揮できなくても良い場合は、Windows XPも利用可能で、チップまたはボードメーカーのWebサイトからドライバーを探してダウンロードすれば、Windows XPでも使用可能となります。OSのサポートがないUSB3.0ポートの性能は発揮出来ません。ビデオドライバーに関してはASRock WebサイトからダウンロードすればVistaと7に対応していることになっていて、試してみたところVista32では動きませんでした。
    ビデオドライバをGMA3650として使用しなくて良い場合は、VESAとしてWindows標準ドライバーが利用可能で、XP, Vista でも4:3ディスプレイのサイズで表示可能です。VESAの場合、アクセラレーションが効かないはずで動画再生を行いたい場合はもたつきそうです。(2012/9/5追記:Intel ホームページにWindows XP用ビデオドライバーが公開されており、ダウンロードしてテストしたところ一応動作しました。)
  • PS/2キーボードポートが実装されていますが、PS2マウスポートは存在せず、マウス接続はUSBポートという中途半端な構成です。どちらかというとPS2マウスポートだけ付いていてキーボードがUSB接続タイプの方がありがたいと感じます。いずれにせよ、PS2/USB変換アダプターが必要となります。
    コネクタとデバイスを直接接続する場合は問題ありませんが、複数ディスプレイとキーボード・マウスを共有するためにCPUスイッチを利用する場合、ディスプレイとビデオポートの接続が確認出来ないためか、起動しない事があります。(KVMアナログビデオケーブルだとBIOS画面にたどり着かず、ビデオケーブルを抜くとOSが起動するケース有り。)最初はPS2マウスが認識されていないのかと思ったら、ビデオポートが認識されていませんでした。
  • 32bit Win7 をCPUスイッチで画面を切り替える度に、戻ってきた時に画面が毎回リセットされるのがうっとうしい。
  • オーディオアンプにアンプが内蔵されていないため、電源無しスピーカーをつなぐと音が殆ど出ない。アンプ付きスピーカーが必要です。
  • 現在Windows7 を入れて2週間ほど使用し、このまま使い続けるか、OSを入れ替えるか迷っているところだが、アイドル時の高負荷状態が気になります。インストール直後はWindows Updateが勝手に動いていて、しばらく我慢状態。終わったかと思ったら今度はHDD上のインデックスを作成していたらしくHDDがしばらくガリガリ音を立てていました。それが終わったにもかかわらず、時々CPU負荷が長時間、場合によっては常時40%くらい動いていて、そのプロセスはNTカーネルとして表示される。非常に気持ち悪い。

Windows7 以外のOSで使うにはどうすればいいか?

  • 64bit OSは使用出来ませんが、Windows7 専用という仕様はビデオドライバーの有無が原因です。
    幸いPCIスロットが1本内蔵されていることを利用し、ここにビデオカードをインストールすればWin7以外のOSを使う事が出来ます。(WinXPを使うなら、OSを入れる前にNICドライバーをUSBメモリなどにあらかじめ準備しておかないと、インストール直後ネットワークにつなげなくて、困る事になります。その他のドライバーインストールもWin7より面倒だと感じました。)
    一番大きな問題は、PCIビデオカードと消費電力。
    16:9の横長ディスプレイを使用する場合、これに表示出来るPCIビデオカードの種類は限定されます。また、16:9対応ビデオカード自体が10W以上の電力を消費する場合があります。
    私の場合、 RIVA TNT2/PCI 32MBという10年くらい前のPCIカードを持っていたのでこれを使用してみたところ、Windows XP Home をほぼ問題なく利用可能でした。ただし消費電力が常時35W程度にアップし、低消費電力用途に購入したという意義が失われます。こういう使い方をするくらいなら、最初からCeleron G530 と安いH61ボードを購入した方がOSとメモリ容量、ドライバーの制約がなく、価格も同程度で済み、消費電力が若干増加するもののD2700より性能に優れたマシンを構築出来るはずです。
  • 将来的にBIOSのアップグレードで64bit OS利用可能にしてもらえるのかどうか?
    2021/01/15に、偶然BIOS ver.1.60 に上げる機会があり動作確認したところ、64bit OS起動可能になっていました。

以上、Windows OSと Atom D2700 チップのメインボードに関係に限定してまとめてみました。MacMiniのメモリ交換で余った1GB DDR3 SO-DIMM x2を再利用したい、Windows以外のOSなら64bit OSをインストール出来るのでは?という勝手な思い込みで購入したわけですが、結果的にD2700ボードの経験値は貯まったものの、かなり時間をロスさせることになってしまいました。
もし、D2700ボードを購入検討中の方がこの文章を読んでいて、32bit Win7以外のWin OSを 考えているなら購入はお勧めしません。

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